本日は弁護士の野中さん に登場頂きます!(諸事情により遠藤が投稿してます)
はじめに
はじめまして。弁護士の野中高広です。最近は、バッティングセンターにはまっています。空振りが約2割ですが(笑)。
ところで皆さんの会社では、OSSのリスクの問題について、どの程度のかたが認識しておられるでしょうか?コンプライアンス体制についても最低限整っているといえますでしょうか?
本日は、OSSに関してコンプライアンス体制の構築をするうえでの留意事項について、すでに皆さんご存知のことがほとんどであるとは思いますが、簡単に検討してみたいと思います。
どうして体制を構築する必要があるのか?
これまでにOSSに関して問題となってきたいろいろな事例を見てみますと、第三者によるリバースエンジニアリングなどによって、OSSの利用が発覚し、OSSライセンス違反を指摘されるような場合があります。OSSのライセンス違反の指摘を受けた場合、謝罪やソフトウェアの差し替えを行なったり、ソースコードの公開などについて迅速かつ適切な対応をとることが重要と言われています。しかも、すばやく適切な対応を行なえば、すぐに訴訟に発展するわけではありませんし、欧米の事例を検討していますと、こうした対応の遅れが係争へと発展しているケースが多いともいえます。
留意すべき事項は?
そのため、いろいろな事態あるいはリスクに事前に備えておくことが必要になるといえそうですが、実際にコンプライアンス体制を構築する際には、どのような点について特に留意する必要があるのでしょうか。会社によって進捗状況は様々だと思いますが、以下で、いくつか基本的な事項について触れてみたいと思います。
· まず、OSSライセンスの利用にあたってのコンプライアンス強化を図るために、OSS利用についての内部規程の作成や、内部規程遵守のための社内体制と仕組みの構築が求められるといえます。その際に、社員の方への内部規程の周知・教育に加えて、社内・社外向けにOSS利用についての問い合わせ窓口を設置することなどもセットで検討しておくことが有効といえるでしょう。
· その前提として、例えばGPLのソースコードの公開範囲についてなど、様々な解釈があり得るケースについては、この分野の有識者や専門家を交えて十分に検討を重ねて、自社の見解を統一しておくことが必要となります。その過程で社内で議論を積み重ねて、各種事例や先例についての知識や理解を深めつつ、多くの人が問題意識を共有することこそが有益ともいえるでしょう。
· また、最近では様々な有用なソフトもありますが、ソフトウェアの検査を行なうことも肝といえます。ソフトウェア開発の初期段階、委託先からソフトウェアが納入される時、あるいは製品の出荷前などに、OSS検出ツールなどを利用して、意図しないOSSが混入していないかを十分に検査する必要があります。特に、ソフトウェア開発の委託をする際には、利用するOSSとその利用条件の開示を求めたり、あるいはOSSライセンス違反をした場合の責任分担やソースコードの調査義務などについても念のため盛り込んでおくことも検討するとよいでしょう。ここらあたりの話については、個人情報の取扱いが第三者に委託される場合の留意事項とパラレルに考えることができるかもしれません。
· さらに最近では、法務デューデリジェンスによる確認も重要となってきております。例えば、M&Aにおいて、買収した会社がOSSライセンス違反をしている場合もあり得るため、法務デューデリジェンスで、OSSに関する問題をレビューしていくことも、今後は一般的になっていくものと思われます。
おわりに
以上、ごくごく簡単に見てきましたが、実際にいろいろな措置を導入していくに当たっては様々なハードルも考えられます。なかなか理解が難しい分野でもあり、問題意識を共有すること自体に苦労することも多々あるかと思います。
本日のテーマが、皆さんの会社のコンプライアンス体制構築がさらに進むうえで少しでもお役に立てれば幸いです。
明日のテーマは…
明日は、Japan WGの設立当初から中心的な活躍をされているパナソニックの加藤さんから「OpenChain Japan WGの活動で集まった事例」についてご紹介いただく予定です。
自社の体制を構築する上で一番気になる「他社はどうしているのか」がわかる貴重な情報ですので、ぜひご期待ください。